恵比寿に出来た中国料理店を見に出かける。
白金商店街の中に今から2年ほど前に出来た伝説の店、ロンフーホンの支店、「ローホートイ」であります。

商店街の電気屋の二階に、お茶と
ワインと
モダンで力強い中国料理が滅茶苦茶旨い店が出来たんだヨ、って言う噂が瞬く間に広まって、みるみるうちに予約が取れない店になっちゃった。
テーブル4つほどの、本当に小さな店でしたから。
7000円ほどでコース料理を堪能できる、決して高い店というわけじゃないのに、まるでそこに
プラチナシートが置かれている…、ような店になっちゃって、なんだかつまんないなぁ…、って思っていたら支店が出来る。
かなりうれしい。
しかも40席ほどの中箱だ、と言うのでますますうれしい。
予約もすんなり取れる気軽さ。
飲食店はそうじゃなくちゃだめなんだよなぁ…、と思ったりする。
ところでこの店、ビックリします。
同じ商店街のまるきし風情の無い場所に入り口がドンっ。
どうみても
香港の路地裏…、であります。
入り口の脇に厨房があって、半分あいたドアの隙間から調理人たちがキビキビ働く様子が見える。
飛び交うのは広東語。
まるで香港。
厨房前の通路を通るといきなり客席。
無造作にテーブルが4つほど置かれていて、その真ん中を通り抜けて奥の階段をズンズン上がると二階のホール。
まるで食堂の造りであります。
おいしい料理=豪華なしつらえ…、を期待してゆくと見事に裏切られる。
でもココが香港であったとしたならば、この雰囲気…、絶対においしいモノが食べられるムードだろう。
期待が膨らむ。
料理もまるで香港ですネ。
例えば焼き物。

豚肉を一つは甘く蜜で焼き、もう一つは同じ豚のバラ肉を皮ごとパリパリに焼き上げてゆく。
その盛り合わせ。
蜜焼きはシットリ甘く、肉のネットリとした食感がつややかで色っぽい。
皮付きで焼いたのは一転、肉汁したたるまるで茹で豚のような柔らかな身。
なのに皮の部分はサクサクでパリパリで、まるで細かいパン粉をつけてあげた三枚肉の茹で豚のよう。
思わず、紹興酒下さいっ…、って大声上げる。
ビールじゃない。
ワインでもない。
あくまで紹興酒、それもオンザロックでバンッと下さい。
そんな料理。
魚の蒸し物。

これまた定番中の定番ですね。
普通はハタで作るのだけど、ここはイサキで代用をする。
その分、大振りの一匹をそのままジャジャッとやってもらって、なんと2800円。
その
土地のその季節の
素材を使えば料理はどんどんお値打ちになる。
…ということでありましょう。
満足、満足。
ところで蒸し物…、広東料理の最も特徴のある調理方法。
素材の味がそのまま活きる。
しかも余分に油を使ったりしなくていいので、体に優しい。
なによりご飯の
おかずに最適。
実用的な料理=蒸し料理…、ということなんでしょう。
中でもこの店でビックリした蒸し料理…、豚肉のハンバーグ風。

豚のひき肉にクワイやシイタケを刻んだのを入れパティ状にして、セイロで蒸す。
醤油ベースのタレをかけ、最後に熱した油をジャジャッとかけて香りをつける。
コクを出すために魚の塩漬けをアクセントに混ぜいれる。
これが塩辛のような海の香りとコクをハンバーグに吹き込むんですネ…、見事な味わい。
思わずご飯を下さい、っておねだりをした。
箸で一口大にザックリ切って、つまんで皿から外すとき、ブチュッと大きな音を立てる。
それほどシットリ。
口の中に入れると以外に弾力のある歯応えがあり、まるで肉で作ったさつま揚げのような味わいがある。
楽しい。
これ一人前でどんぶり飯2杯ほど、平らげることができるだろうなぁ…って感じの素朴で複雑なおかずの味。
脱帽。
ター菜の炒め物。

エビの玉子を乾かして粉末にした
調味料で味を調えてもらったモノ。
これが見事に香港の味と香りが強烈にする。
香港には「エビの玉子麺」なる乾燥麺を売っていて、街角屋台でも気軽に食べることが出来たりもする。
路地裏に迷い込んだ途端に、おや、ココ、なんだかエビ臭いぞ…、と思ったらその近所に必ず麺のおいしい食堂がある。
そんな感じ。
最後の最後でいただいたワンタンメン。

これもまさしく香港風。
白濁した鶏のスープに身がパンパンに詰まったワンタン。
それに細い縮れていない玉子麺。
どうして中国の人って、鶏を使ってこれほどまでに濃厚なのに鶏臭さの微塵も無いスープを取ることができるんだろう。
ジェラシーを感じさえするキレイなスープ。
飲むと口の中がゼラチン質でスルスルとする。
前歯の裏側なんかツルツル、舌が滑るような感じにコーティングされるほど。
堪能。
ワザワザいくほどのことのない店かもしれない。
おいしいのだけれど、過大な期待を抱いてくるとちょっとガッカリするかもしれない。
けれど、香港で当たり前に食べられるけど日本では絶望的に食べることが出来ない料理に必ず出会える。
それを考えると得難い店で、香港にいった気持ちになれる度合いはかなり高い。
ボクんちの近所に一軒あったら、どんなにかしらシアワセだろう。
そう思う。
東京の中国料理事情…、どんどん面白くなってくるではありませんか。